- 2008年12月10日 16:08
- CBD/COP9:リポート
2008年5月にボンで開催されたCBD/COP9で「女性と生物多様性」という声明が発表された。JFBのメンバーが持ち帰ったその声明文を、「ワーキングウーマン フェミニズム英語翻訳グループ」が翻訳し、解説文をつけて発表したので、それを下記に紹介する。
【女性と生物多様性】
私たちは世界の様々な国からの科学者、活動家、母、農民、生産者、消費者、教師である女性たちです。私たちは、私たち自身と世界中の声なき女性たちのために発言します。
世界を席巻する非民主主義的な社会構造と開発モデルは、往々にして、私たち女性を、女性による意思決定の必要性、女性のパワー、創造性を尊重してきませんでした。
一般的に、女性の尊厳や生活、固有の文化、地域社会、そして人間性が脅かされているように、生物多様性も脅かされています。女性が行う仕事や世話は軽視され続けてきました。家父長制的なものの見方は、生物多様性を向上させ新たに産み出している女性の役割を侮り、評価しないという考えを根底においているのです。世界を支配しているこのモデルは、この惑星上に住む男女を私たち女性が誕生させたことを忘れているだけでなく、私たちが食糧主権と食糧の安全保障を保持し、平和のために活動し、種子を守り、伝統と記憶とビジョンを維持していることを忘れています。
私たちには、自身のそして母や祖母から引き継がれた叡智があり、そのため、民営化や独占を通して私たちに悪影響をもたらしたり、人々を蓄財のみに走らせたりするモデルの押し付けに抵抗せざるを得ません。私たちは、地域の文化や、女性の特別な働きや女性が必要としているものに目を向けざるをえません。そのおかげで、失われずに残されてきたものがあるからです。
したがって私たちは次のように宣言します
*ナノテクノロジーや合成生物学の進展に見られるように、生命体を、化学物質に変えてしまうこと、即ち単なる天然資源や経済資源におとしめてしまうようなことに反対します。
*生命に対する特許権の設定、生物資源に対する侵害利用(バイオパイラシー)や、文化に対する侵害に反対します。
*遺伝子組み換え生物に反対します。なかでもGMO樹木には、実証をもって反対します。
*いわゆる気候変動の解決策としての、工業的農産物燃料や核エネルギーに反対します。
私たちは、私たち自身の種子を維持し分かち合う権利、そして他から手に入る種子を自由に利用できる権利を、全ての女性のために要求します。
私たち女性は、あらゆるレベルの生物多様性政策における女性の完全参加と利益配分を望みます。また、環境に配慮した健全な生活を営む上で女性の管理の必要性を主張します。
土地の権利は、特に地方に住む女性に与えられるべきであり、財産権は、あらゆる世代の女性に起きている貧困、飢餓を克服するために、すべての女性に対して与えられるべきです。
こうした要求とともに、私たちは、例えばアジェンダ21の第24章と第28章、女性差別撤廃条約、1995年北京行動綱領の特にK章 女性と環境、ミレニアム開発目標のゴール3などの国連に関連する私たちの取り組むべき課題について言及します。
このため、私たちは生物多様性条約に基づくジェンダー行動計画とそのための特別予算措置を求めます。また、ジェンダー行動計画に関連したジェンダーメインストリーミング(ジェンダーの考え方を取り入れること)や能力開発が、生物多様性にかんして十分な独立性が確保された専門知識をもって実施されることを望みます。生物多様性条約を進める過程で、強力な利害関係者から資金援助を受けていない独立した専門家が往々にしてほとんど無視されていることが深く憂慮されるからです。
最後になりましたが、私たちは、持続可能な経済を最優先とせねばならない、そしてそれは多様性、尊厳、文化の独自性そして何よりも生命の尊重を基本としたものでなければならないとして、結びとします。
2008年5月23日ボンにて
・WECF:共通の未来のためのヨーロッパの女性たち(デンマーク/ドイツ)Sabine Brueckmann
・平和とエコロジーを求める女性たち(ドイツ)Eva Quistorp
・平和を守るおばあちゃんたち(米国-ドイツ)
・SEI:社会環境保護研究所(ポーランド)
・グレイル女性運動(南アフリカおよび他諸国)
・エルモロ/エコツーリズム権利と開発フォーラム(ケニヤ)
・好環境促進局(タイ)
・グラース地方企業家クラブ(フランス)
【解説】
COP9というのは生物多様性条約第9回締約国会議のことだ。これは2008年5月にドイツで開かれた。そして第10回の集まり、すなわちCOP10が2010年に名古屋で開かれることになっている。私と一緒に環境関係の仕事をしているWW会員のSさんが、このCOP9で出された「女性と生物多様性に関する声明」を入手してくれたので、フェミ英語グループで取組むことになった。
でも「女性と生物多様性」って ── どんな関係があるの?と思いますよね。
以下の訳文を読んでいただければよいのだが、わかりにくいのは、訳が悪いだけではないと思う。そこで、このバックグラウンドとなることを少し説明することにする。
生物多様性条約では
1:生物多様性の保全
2:生物多様性の利用方法
3:遺伝子資源へのアクセスと利益配分
というのを主要な論点としている。1はともかく、2は何?、3にいたっては耳慣れないテーマだと思う。
生物多様性というのは、読んで字の如く、多様な生き物が支えあって自然界を形成していることを意味する。地球上には、様々な生態系があり、であるからこれに応じて様々な種類の生物がいる、そして同じ種類でも一匹一匹あるいは一人一人は異なった遺伝子をもっている。そういう多様性があるから、全体として驚くべき柔軟性を持った自然界が成立しているのである。
こと人類は、食はモチロン、医薬品や、日用品、建築材料や環境問題まであらゆる面で生物多様性の恩恵を受けて暮らしている。だから、人類が生き延びるために生物多様性を維持することは非常に重要で、生物多様性をどのように利用していくのかということは、国家間の戦略としても極めて重要な問題となっているのだ。
ごく簡単に事情を説明すると、開発によって自然が破壊されて、生物多様性が危機に瀕している。だから、バランスの良い生態系の利用をしていかないと人類全体の存続に関わることになる。先進国にとっては、(途上国の)自然資源をある程度保全し、利用の権利をどのように確保していくかは重要な資源戦略であり外交課題なのだ。そして提供する途上国側にとっては、先進国が途上国の自然資源を勝手に利用して、それによる恩恵も独り占めしている実情に対し、収奪されるばかりはいやだと主張する ── そういう状況なのである。
また、農民にとっては、例えば、改良を重ねながら、土地に合った多様な品種を栽培してきたのに、先進国による開発によって、「高収量の米の品種(しかも単一栽培)」に変えられてしまう。すると、一時的には高収量が得られても、バランスの悪い灌漑や農薬・肥料によって土地が疲弊して長続きせず、その被害を農民が一方的に蒙ることになる。そればかりでなく、多国籍企業による改良品種の「種(タネ)」は、企業による特許権がつくので、農民はそれを購入しなければいけないし、場合によっては特定の肥料や農薬までセットで買わなくてはいけない。途上国の農民が自ら生みだした種子まで特許権が波及して、自由に使えなくなってしまう事態まで懸念されるのである。後述する「声明」のなかで「種子(タネ)」の問題が重く扱われているのはこのあたりに起源がある。
この過程では次のような対立が起こっている。
◎先進国・多国籍企業vs途上国政府(利益配分)
◎先進国vs先進国(生物資源争奪戦)
◎環境団体vs途上国政府(保全vs開発の権利)
◎多国籍企業&途上国政府vs途上国の農民(自ら育てた資源に対する権利の剥奪、被管理)
◎途上国の男性農民vs女性農民(女性への搾取)
また、生物多様性条約では、女性の役割の重要性や意志決定過程への参加が謳われてている。
それは、途上国では農業の80%が女性に担われている場合もあり、実際に地域の生態系や伝統的農法に関し、深い知識を持っているのは女性だからなのである。だから、有効に自然を利用していく上では、彼女らの参画が必須なのだ。そして、資源をめぐる対立や、生物多様性の喪失などによる被害を末端で厳しく蒙るのも途上国の女性ということになる。
それが、「女性と生物多様性」という切り口の出て来る理由だ。
さて、この切り口はいわゆる「差異論」と考えられないこともない。この切り口や次ページの声明に対し私たちはどう考えて行くのだろうか?
この点については、できれば次号でふみ込んで触れてみたいと思う。
是非、この声明を読んだ感想をお寄せください。
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フェミ英語グループ(AKANE)